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日産自動車は6月15日、主力小型車「ノート」の上級モデル「ノート オーラ」を秋ごろ発売すると発表した。薄型前照灯や木目調の内装を採用し、高級感のある小型車として売り出す。ドイツメーカーなどの輸入車に対抗し、これまで開拓できなかった顧客層にアピールする。
通常のノートより運転席の画面が大きく、窓ガラスなどに遮音性の高い部材を多く使った。米国の音響機器メーカー、ボーズ製の8個のスピーカーを座席の頭部などに配置し、迫力のある音を楽しめる。
通常のノートは昨年12月に全面改良して発売した。世界的な半導体不足で部品供給が滞っており、オーラは当初計画より発売時期が遅れ、秋ごろになったという。
星野朝子副社長はオンライン発表会で「従来のコンパクトカーの殻を破る自信作に仕上がった」と語った。
半導体不足が暗い影
日産は、新型の電動車「ノート オーラ」を今秋投入し、低迷する国内販売で巻き返しを図る。独自技術「e-POWER(イーパワー)」を搭載したハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)で反転攻勢を図りたい考えだ。ただ、世界的な半導体不足は生産や販売に暗い影を落とし、悲願のブランド復権が遠のくリスクも消えない。
日産は昨年5月、1年半で12モデルの新型車を投入すると宣言。重要市場の一つと位置付ける日本市場では、HV専用の小型スポーツ用多目的車(SUV)「キックス」、小型車「ノート」を相次いで発売した。
しかし、長らく車のモデルチェンジが遅れていたことが響き、平成24年3月期に13・8%だった市場シェアは令和3年3月期に10・3%まで低下した。
日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会がまとめた5月の車名別新車販売の上位10車種は、トヨタ自動車が半数を占め、日産は1車種も入っていない厳しい状況だ。
今秋に発売予定のHV専用小型車「ノート オーラ」は、通常のノートと比べ出力が18%向上したほか、防音特殊フィルムの採用などで静かなゆとりのある走りを実現。
「上質さを追求し、新しいポジショニングを狙っている」(遠藤智実・商品企画部日本商品グループ主管)といい、輸入車が優位に立つ250万~300万円の高価格帯の小型車市場を開拓したい考えだ。
ただ、世界的な半導体不足が生産や販売にもたらす影響は大きい。日産は4年3月期に年間25万台規模の減産を見込む。
最大航続距離610キロで、高速道路の同一車線で手放し運転ができる運転支援技術「プロパイロット2・0」を搭載するSUVタイプの新型EV「アリア」の投入時期も、当初予定していた今年中頃から今冬にずれ込んだ。
日産は4年3月期に3期連続の最終赤字を見込む。新型車の投入が再び滞れば、業績回復の足かせになりかねない。
筆者:宇野貴文(産経新聞)